福岡高等裁判所那覇支部 平成9年(行コ)3号 判決 1998年2月05日
沖縄県平良市字西里二三八番地
控訴人
平良重信
右訴訟代理人弁護士
羽地榮
沖縄県平良市字東仲宗根八〇七番地の七
被控訴人
平良税務署長 平良真八
右指定代理人
小澤正義
畑中豊彦
世嘉良清
武藤彰
呉屋育子
郷間弘司
荒川政明
富村久志
古謝泰宏
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一当事者の求めた裁判
一 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が平成元年六月三〇日付で控訴人の昭和六一年分の所得税についてした更正処分及び過小申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。
3 訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。
二 控訴人その趣旨に対する答弁
主文同旨
第二事案の概要
本件の事案の概要は、次のとおり付加するほか、原判決の事実及び理由「第二 事案の概要」のとおりであるから、これをここに引用する。
1 原判決四枚目表四行目の「締結し、」の次に「控訴人は、」を加える。
2 同五枚目裏八行目の「重加算税賦課決定処分の一部」の次に「(過少申告加算税相当額を超える部分)」を加える。
3 同一一行目の「本件」の次に「課税処分の」を加える。
4 同六枚目一行目の「国税通則法二八条二項」の次に「あるいは憲法一三条、三一条」を加える。
第三争点に対する判断
一 争点1(更正通知に理由の付記がないことは違法か)について
当裁判所も、本件課税処分の更正通知書に理由の付記がないことにつき、違法性は認められないと判断するものであるが、その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決の事実及び理由の「第三 当裁判所の判断」の一(原判決六枚目表六行目から同裏四行目まで)と同じであるから、これを引用する。
1 原判決六枚目裏二行目の「譲渡所得のみについての」を「譲渡所得の金額の計算に基因する」と訂正する。
2 同三行目の「明らかである。」を「明らかであり、その場合、更正通知書に理由を付記しなかったとしても、憲法一三条、三一条に違反するものでもない。」と訂正する。
二 争点2(本件交換に所得税法五八条の交換の特例の適用があるか否か)について
1 本件土地建物の交換の経緯
甲第一号証、第四号証、第七ないし第一一号証、第一五ないし第一七号証(第一七号証については、後記認定に反する部分を除く。)、第一九号証、第二一号証の一ないし四、乙第一ないし第三号証、第五ないし第一九号証、第二一、二二号証、第二四号証ないし第三九号証、証人下地惠昭及び同奥作雅美の各証言(いずれも、後記認定に反する部分を除く。)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。
(一) 控訴人は、本件譲渡土地<1>及び<2>を所有し、同土地上に本件譲渡建物<1>及び<2>を所有して、右建物をグランド国映に賃料月額一〇万円で賃貸し、グランド国映は、右建物で映画館(国映館)を経営していた。なお、グランド国映の無限責任社員は、控訴人の妻である平良恒であった。
控訴人は、また、昭和五九年一一月三〇日、狩俣幸一(以下「狩俣」という。)から、原判決別表二の「賃貸資産」欄記載の土地(以下「本件賃貸土地」という。また、本件譲渡土地<1>及び<2>と本件賃貸土地を総称して「本件控訴人所有土地」という。)を購入した。
(二) 琉球銀行は、本件取得土地<1>ないし<3>を所有し、同<1>の土地上に本件取得建物<1>を、本件取得建物<3>の土地上に本件取得建物<2>及び<3>をそれぞれ所有し、同<1>を銀行店舗(宮古支店)として、同<2>を支店長社宅として、同<3>を行員寮としてそれぞれ使用し、また、本件取得土地<2>を右店舗の駐車場として使用していた。
同銀行では、右宮古支店の店舗が手狭であったことなどから、沖縄県平良市に宮古第二店舗を設けるか、あるいは、宮古支店を広い場所に移転しようと考え、昭和五八年五月ころから、その候補地を探していた。
(三) 琉球銀行企画総務部調査役奥作雅美(以下「奥作」という。)は、右候補地を探す業務を担当していたが、本件控訴人所有土地のことを知り、昭和五九年一二月二五日、株式会社沖縄協栄産業会長の砂辺幸二郎を介し、控訴人に対し、琉球銀行が宮古支店の店舗移転先として本件控訴人所有土地を考えているという意向を伝えたところ、控訴人は、前向きに検討するという回答をした。
なお、これ以降、琉球銀行と交渉にあたったのは、控訴人のみであり、グランド国映の代表者である平良恒は、右交渉や契約締結に全く立ち会わなかった。また、控訴人は、右交渉の際、自己の意向とは別に、グラウンド国映独自の考えを同銀行に伝えたことはなかった。
(四) そこで、奥作は、同月二九日、「宮古第二店舗の設置は延期したい。本件控訴人所有土地に店舗を移転新築したい。そのため控訴人との折衝を開始したい。」という内容の「宮古第二店舗(平良支店)構想の変更について」と題する稟議書(乙第八号証)を起案し、右稟議書の内容は、昭和六〇年一月八日の常務会に報告され、承認された。
右稟議書では、本件控訴人所有土地三筆と琉球銀行所有の本件取得土地<1>及び<2>の二筆とを交換し、交換によって生じる差額は、金銭的に解決することとされていた。
(五) 奥作は、昭和六〇一月八日、琉球銀行企画総務部長仲吉良治(以下「仲吉」という。)とともに控訴人と会い、琉球銀行の店舗用地として本件控訴人所有土地を利用させてほしいと正式な意思表示をした。これに対し、控訴人は、前向きに検討したいと回答するとともに、「節税について対策したい。」と述べた。
(六) 奥作は、同月一六日、琉球銀行庶務部調査役友寄とともに控訴人に会ったが、控訴人は、その際、琉球銀行が本件控訴人所有土地に店舗を作るということに原則的に同意した。奥作は、その方法として、本件控訴人所有土地三筆及び建物二棟と琉球銀行所有の本件取得土地三筆及び本件取得建物三棟とを交換し、交換の際に発生する差額は現金で支払いたいと申し入れた。これに対し、控訴人は、「交換による差額を現金で受け取ると税金に七〇パーセントくらい持って行かれるので痛い。」などと述べたが、グランド国映の立退料ないし休業補償等については全く話題とならなかった。
その際、奥作は、本件控訴人所有土地の時価につき、坪単価一〇〇万円くらいかなどと探りを入れたところ、控訴人は、坪単価一五〇万円であると答えた。
その後、奥作は、同日夜、控訴人と飲食しながらその本心を聞いたところ、控訴人は、「交換した場合、自己の土地建物を手放して琉球銀行の土地建物を手に入れることになるが、現金が手元に残らず、あまりメリットがない。」と述べるとともに、自分の土地の方が琉球銀行の土地よりも時価が高いことを印象づけようとしていたことから、奥作は、これらの言動等から、控訴人が二億円ないし三億円のプラスアルファを求めていると推測した。
(七) 控訴人は、翌一七日、奥作に対し、本件控訴人所有土地につき「コザ支店方式」(土地の総価格の五〇パーセントを保証金として差し入れ、期間三〇年の地上権を設定するもの)を考えてほしいと提案した。
また、控訴人と奥作は、同日、これから交渉を進める上で不動産の鑑定評価が必要となるので、早急にその評価を行うことを合意した。
(八) 奥作は、控訴人のコザ店方式の提案を持ち帰り、仲吉と相談したが、琉球銀行としては、店舗用地を自ら所有するという方針を取ることとし、これに応じないこととした。
なお、控訴人は、同月二四日、琉球銀行に対し、交換によると節税対策ができないので「コザ店方式」にして保証金を時価の五〇パーセント積んでほしいという書簡を送付した。
(九) 琉球銀行は、店舗用の土地建物を取り引きするには大蔵大臣の認可を受けなければならず(銀行法八法)、そのためにも当該不動産について鑑定評価をすることが必要であったので、同月一八日、控訴人の知人の下地惠昭(以下「下地」という。)が代表者となっており、控訴人が鑑定依頼をした有限会社南西不動産鑑定所(以下「南西不動産鑑定所」という。)に対し、琉球銀行所有の本件取得土地建物の鑑定評価を依頼した。控訴人は、その際、下地に対し、本件控訴人所有土地は坪単価一五〇万円程度であると述べた。また、琉球銀行は、下地に対し、鑑定依頼の目的は土地建物を交換するにあたって交換の特例を適用するためであると伝えた。
その後、琉球銀行は、正式の鑑定評価書が出来上がるまでの間に、たびたび南西不動産鑑定所に問い合わせをし、本件控訴人所有土地の時価につき坪単価一四〇万円とする鑑定評価書の下書きを受領したりしたが、その評価が高すぎるとして評価の訂正を依頼し、最終的にはこれを一三〇万円とする鑑定評価書を受領するに至っている。
(十) また、琉球銀行は、土地建物を交換してから本件控訴人所有土地に新店舗を建設するまでの間、仮店舗が必要となるため、平良市内において仮店舗用の建物を探すなどしていたが、適当な物件が見当たらなかったことから、控訴人に対し、土地建物の交換後も引き続き、控訴人所有となる銀行店舗等(旧店舗)を貸してほしいと依頼した。控訴人は、これに対し、その数日後に、そうであれば休業損害を考えてほしいと回答した。
(十一) 奥作は、同月二六日、琉球銀行宮古支店長富永とともに控訴人と会い、土地建物の交換の交渉をした。控訴人は、その際、「コザ支店方式」は保留したいと述べた。控訴人と奥作は、本件控訴人所有土地三筆及び本件譲渡建物二棟と琉球銀行所有の本件取得土地三筆及び本件取得建物三棟とを対象として、<1>土地と土地、建物と交換する、<2>双方の土地の鑑定価額を基準として総価額を算定し、交換特例の適用が受けいれられるように、交換物件を決定する、<3>交換特例が受けいれられないために交換の対象から除外した土地については、話し合いにより、賃貸借にするか売買にするかを決定する、<4>建物についても鑑定評価額を基準として交換する、<5>琉球銀行は、国映館の休業補償と改造費を負担する、という基本的内容で交渉をすすめた。
もっとも、控訴人は、奥作に対し、すべての土地建物を交換の対象として、土地建物の価額を鑑定評価額以内に抑えて交換の特例が受けられるようにし、総価格との差額は節税のため休業補償として支払ってほしいと要請した。
そして、控訴人と奥作は、詳細については同月二八日にできる予定の鑑定評価書を見てから相談することとし、同年二月一〇日までに条件を詰めて同月一九日までに契約することで基本的に合意した。
(十二) 奥作は、同年二月二日、宮古グランドホテルで控訴人と話し合ったが、その際、控訴人は、右(二)の休業補償及び改造費として、一億五〇〇〇万円ないし一億七〇〇〇万円欲しいと希望した。
(十三) その後、奥作は、同月四日、南西不動産鑑定所で控訴人と話し合ったが、その際には、後記(一四)記載の鑑定評価額及び交換価格が概ね明らかとなっており(ただし、当初は琉球銀行所有の本件取得建物三棟の交換価格を五九七三万円とする予定であった)、その金額を前提に、<1>控訴人所有の本件譲渡土地二筆と琉球銀行所有の本件取得土地三筆を交換したうえ、琉球銀行が控訴人に対し、交換価額の差額四八一万四〇〇〇円を支払う、<2>交換の対象外となる本件賃貸土地は、控訴人が銀行に対し、賃料月額坪当たり四〇〇〇円、保証金九〇〇〇万円で賃貸する。<3>控訴人所有の本件譲渡建物二棟と琉球銀行所有の本件取得建物三棟を交換したうえ、控訴人が琉球銀行に交換価値の差額二九三万円(その後に後記のとおり三二〇万円に変更された)を支払うということについて、基本的な合意が成立した。
そして、控訴人は、休業損害等につき、右保証金九〇〇〇万円を含めて少なくとも二億円を支払って欲しいと希望した。
琉球銀行では、そのころ、休業損害を支払った例はなく、休業損害として相当な金額がいくらであるのかは分からなかったものの、右土地建物の交換が行なわれてから控訴人所有土地に新店舗が建設されるまでの間、控訴人所有となる銀行店舗や駐車場等を引き続き賃料月額合計六〇万円で賃借するという話がすすんでおり、世間相場の賃料額との差額や支出しなくてすむ仮店舗への移転費用等を合計する約一億円程度となることから、その範囲内の支出には応じる考えを持っていた。そこで、仲吉は、奥作から控訴人の希望金額を聞き、その金額の根拠となる資料は見ていなかったものの、保証金九〇〇〇万円を含めて二億円程度の支出であればやむをえないと考えた。
(十四) 奥作は、翌五日、これまでの控訴人との間の交渉経過をまとめた稟議書(乙第一〇号証)を提出し、決裁を受けた。
右稟議書には、税務対策が控訴人の絶対条件であり、控訴人と琉球銀行との間で、土地と土地、建物と建物の等価交換による交渉をすすめたこと、土地については、控訴人所有の本件譲渡土地<1>及び<2>は、調査後の鑑定評価額は坪単価一四〇万円の合計四億一四五九万六〇〇〇円であったが、その交換価格を坪単価一三〇万円の合計三億八四九八万二〇〇〇円とし、琉球銀行所有の本件取得土地<1>ないし<3>の交換価格は、鑑定評価額どおり、合計三億八〇一六万八〇〇〇円としたうえ、琉球銀行から控訴人に交換価格の差額四八一万四〇〇〇円を支払うこと、残余の土地(本件賃貸土地)については、琉球銀行が控訴人から保証金九〇〇〇万円、借地料月額五六万六〇〇〇円(坪単価四〇〇〇円)で賃借りすること、建物については、控訴人所有の本件譲渡建物<1>及び<2>の交換価格は、鑑定評価額どおり、合計五六八〇万円とし、琉球銀行所有の本件取得建物<1>ないし<3>鑑定評価額は八九三三万円であったが、その交換価額を六〇〇〇万円としたうえ、控訴人から琉球銀行に交換価格の差額三二〇万円を支払うこと、また、補償については、控訴人は、一年を限度とする休業補償として五〇〇〇万円、県の基準を基本とする顧客補償として二五〇〇万円、プラスアルファとして一五〇〇万円の合計九〇〇〇万円を、物件補償として五〇〇〇万円を各要望しているが、二月二日及び四日の交渉を踏まえると、物件補償については三〇〇〇万円から四〇〇〇万円で妥結することを予想しているようであること、琉球銀行としては、控訴人の要求するプラスアルファについては金額が出た段階で検討し、物件補償についても休業補償との総合で検討したいので鑑定評価額が出てから検討、調整することとしたことなどが記載されている。
(十五) 奥作は、その後、休業補償、物件補償について南西不動産鑑定所の評価額が出たことから、これを参考に控訴人との交渉を続けた結果、以下の稟議書記載のとおりの合意に達したことから、同月一二日、「節税対策が控訴人の絶対条件であり、土地対土地、建物対建物の交換・交渉を進めてきたところ、条件の整備ができたので、以下のとおり実行したい。」旨の稟議書(乙第一一号証)を提出し、決裁を受けた。
右稟議書には、前記(一四)記載の稟議書の内容のほか、琉球銀行の新店舗等の建築まで現在の店舗等を賃借すること、本件取引によって琉球銀行が控訴人に支払う金額に関し土地建物の交換差額一六一万四〇〇〇円、土地賃貸保証金九〇〇〇万円、営業補償五四九八万円、物件補償(通損補償)五二四〇万六〇〇〇円の合計一億九九〇〇万円であること、土地賃貸保証金九〇〇〇万円は、琉球銀行が一〇年後をメドに控訴人から本件賃貸土地を購入する際、その購入代金に充当されること、この決裁次第、土地建物の交換、賃貸についての基本契約を締結することなどが記載されていた。
その後、右稟議書の内容は、同月一九日、常務会に付議され、可決されたが、その常務会付議書(乙第一一号証)には、右稟議書と同趣旨の内容のほか、営業補償五四九八万円の内訳として、休業期間中の収益減一八八六万八〇〇〇円、顧客喪失に伴う損失補償額一八八六万八〇〇〇円、休業中の人件費補償額八二一万一〇〇〇円、フイルム賃貸基本料七二〇万円、その他固定費及び法令上の費用一八三万三〇〇〇円が、また、物件補償五二四〇万六〇〇〇円の内訳として、電気関係二七四七万円、映写関係九五五万円、消防用設備費六九八万六〇〇〇円、移転改造費八四〇万円がそれぞれ記載され、また、補償の時期を建物交換の時期である昭和六〇年八月一日とすることが記載された。
右補償金額の内訳は、南西不動産鑑定所作成の調査報告書に基づいたものであり、その調査報告書においては、営業補償ないし休業補償は映画館が一年間にわたって休業することを前提に計算されており、また、物件補償の移転改造費については、改築費は推定改善費の額を上限として、専門家等の意見価格及び衡平の原則(通常の改築費よりも相当の価格が余分にかかることを前提にして、双方の負担とすることが妥当とするもの)から認定したとされていた。
(十六) 以上の経緯を経た後、同月二〇日、原告及びグランド国映を一方当事者(甲)とし、琉球銀行を他方当事者(乙)として、土地・建物の交換賃貸借に関する基本契約(乙第一号証、以下「本件基本契約」という。)が締結された。
右基本契約においては、甲と乙は、昭和六〇年九月二日に甲の本件譲渡土地<1>及び<2>と乙の本件取得土地<1>ないし<3>とを交換し、乙は甲に交換差金四八一万四〇〇〇円を支払うこと(一条)、甲は乙に対し、同年三月末日までに、甲の本件賃貸土地を敷金(保証金)九〇〇〇万円、地代月額五六万六五〇〇円で賃貸すること(二条)、甲と乙は、同年八月一日に甲の本件譲渡建物<1>及び<2>と乙の本件取得建物<1>ないし<3>とを交換し、甲は乙に交換差金三二〇万円を支払うこと(三条)、乙は甲に同日に映画館の休業に伴う補償として休業補償五四九八万円、通損補償五二四〇万六〇〇〇円を支払うこと(四条)、建物の交換後、甲は乙にその所有となる銀行、駐車場、居宅、共同住宅を賃料月額合計六〇万円で賃貸すること(五条)、乙は甲に本件基本契約の保証金として九〇〇〇万円を差し入れ、二条の賃貸借契約の成立後はこれをその敷金に充当すること(六条)が規定されるとともに、契約の履行にあたっては個々の取引につき個別の契約書を作成することが定められていた。
(十七) 控訴人と琉球銀行は、同年三月三〇日、本件基本契約に基づき、本件賃貸土地について、土地賃貸借契約(乙第二一号証)を締結した。
この間に、控訴人から琉球銀行に対し、敷金ないし保証金につき、控訴人が狩俣から本件賃貸土地を購入した代金が一億二〇〇〇万円となっているため、これが六〇〇〇万円以上となると、実質的な譲渡所得とみなされて課税されるおそれがあるので、九〇〇〇万円から六〇〇〇万円に下げ、その見返りとして、引下げ額の利回りに相当する額の地代の値上げをしてほしいという提案があり、同銀行がこれを了承したため、右契約においては、その部分につき、本件基本契約が変更された。
(十八) 控訴人と奥作は、本件基本契約に基づいた個別契約を締結するための交渉を続け、その結果、右(十七)のとおり基本契約の第二条に基づいた土地賃貸借契約を締結したほか、同年八月二六日までの間に、同第一条の土地の交換については本件基本契約どおりとすること、同第三条の建物の交換については、交換時期を昭和六一年二月二八日に変更し、その他は本件基本契約どおりとすること、同第五条の建物等の賃貸借契約に関しては、控訴人所有になる本件取得土地<2>の駐車場については、控訴人ないしグランド国映が同所に直ちに映画館を建設できるようにこれを賃貸対象としないことにするととっもに、同年三月一日から、本件取得建物<1>(銀行店舗)を賃料月額三五万円で、本件取得建物<3>(行員寮)を実勢相場でそれぞれ賃貸することに変更することで合意に至った。また、本件基本契約三条及び五条が右のとおり変更されたことに伴って映画館の休業期間が短縮されることとなったが、控訴人は、奥作に対し、営業補償(休業補償)及び物件補償(通損補償)の総額は一億〇七三八万六〇〇〇円のままとし、その内訳につき、営業補償(休業補償)を一八六八万七〇〇〇円に減額し、物件補償(通損補償)を八八六九万九〇〇〇円に増額してほしいと要望し、奥作は、これを了解した。
それと同時に、南西不動産鑑定所作成の営業補償等の関する調査報告書(甲第一号証)も、営業補償(休業補償)につき、休業期間を一年から四か月に訂正してその金額を一八六八万七〇〇〇円とするとともに、物件補償(通損補償)を八八六九万九〇〇〇円とするものに差し替えられたが、当初に作成されたもの(奇数頁左下角に印刷された文書記号が「OS0100207―52」のもの、五頁から一二頁まで)に新しく作成したもの(同文書記号が「OS0200002―58」のもの)を継ぎ合わせて作成されたため、例えば、移転改造費につき、「8 その他の項目の算定要領」の欄(一一頁ないし一二頁)においては、前記(十五)記載のとおりの根拠により八四〇万円を移転改造費として認定したと記載しながら、そのまとめにあたる「11 その他の項目」の欄(一五頁)においては、きわめて不完全な内容の業者見積書のみを根拠として、移転改造費については四四一九万三〇〇〇円を妥当ななものとして認定したと記載しているなど、相互に矛盾した合理性のない内容のものとなってしまった。
(十九) 右(十八)記載の合意に従い、控訴人と琉球銀行は、同年九月二日ころ、控訴人を一方当事者(甲)とし、琉球銀行(乙)を他方当事者として、土地の交換契約(乙第二号証)を締結するとともに、控訴人及びグランド国映を一方当事者(甲)とし、琉球銀行(乙)を他方当事者として、昭和六一年二月二八日にそれぞれの建物を明け渡すことなどを内容とする建物交換契約(乙第三号証)を締結し、さらに、控訴人及びグラウンド国映を一方当事者(甲)とし、琉球銀行(乙)を他方当事者として、同年三月一日から本件取得建物<1>(銀行店舗)を賃料月額三五万円で、本件取得建物<3>(行員寮)を賃料月額三〇万円で賃貸する旨の賃貸借契約(乙第三五証)を締結し、それぞれの契約書につき、各当事者の記名押印がなされた。
右土地及び建物の各交換契約においては、双方の当事者は、それぞれの土地、建物につき、所有権の完全な行使を阻害する一切の権利及び公租公課その他の賦課金の未納に基づく一切の負担を所有権移転登記のときまでに除去することが定められた。
(二〇) 琉球銀行は、昭和六〇年九月六日、控訴人に対し、右土地交換契約及び建築物交換契約に基づき生じた交換差金として、一六一万四〇〇〇円を支払った。
(二一) 琉球銀行は、映画館の営業補償(休業補償)及び物件補償(通損補償)につき、控訴人に対し、契約締結時に支払うべき第一回目の支払いとして、同日、八八六九万九〇〇〇円を、映画館移転時に支払いとして、昭和六一年三月一三日、一八六八万七〇〇〇円をそれぞれ支払った。
右支払いに関する領収書には、グランド国映の会社名等が記載され、代表者印が押印されているほか、控訴人もこれと並んで署名押印した。また、琉球銀行の支払伝票は、第一回目の支払いの宛先を控訴人としていた。また、第二回目の支払いの宛先はグランド国映であるが、その金員は琉球銀行宮古支店の控訴人名義の普通預金口座に振り込まれた。
また、本件基本契約においては、前途のとおり、それぞれの契約につき個別の契約書を作成することとなっていたが、右補償金については、支払期日や支払回数が変更となったにもかかわらず、個別の契約書は作成されなかった。
(二二) グランド国映は、その後まもなく、控訴人から本件取得土地<2>を賃料月額一〇万円で賃借し、映画館及び店舗の建設にとりかかり、昭和六一年四月一五日、これを完成させた。
また、本件取得土地建物については、昭和六一年一月一〇日受付で控訴人に、本件譲渡土地建物については、同年二月二四日受付で琉球銀行に、いずれも同年一月九日交換を原因とする所有権移転登記がされた。
2 右認定事実によれば、本件において、琉球銀行との間の交渉を行っていたのは専ら控訴人であり、控訴人が、自己の立場と区別して、グランド国映の希望等を述べたことはなく、自らが節税をして現金を得ることを一貫として強く希望していたものであって、その交渉過程を具体的にみても、琉球銀行は、本件控訴人所有土地を利用したいと考え、当初は控訴人所有の右土地三筆と同銀行所有の本件取得土地<1>及び<2>の二筆とを交換し、交換によって発生する差額を現金で支払う計画を持ち、その後、控訴人との間で、右各土地のほか本件取得土地<3>及び本件取得建物三棟、本件譲渡建物二棟をも交換の対象としたうえ、その差額を現金で支払うということを前提に交渉を進めたものであり、控訴人も、当初、グランド国映に対する立退料や休業補償等について全く話題にせず、その後に、琉球銀行が土地建物の交換後も引き続き控訴人所有となる銀行店舗等を賃借したいという希望を述べたことから、休業補償を求めるようになったものの、その際、それぞれの所有する土地建物の価格を差額を節税のため休業損害として支払って欲しいと述べており、これに対し、琉球銀行も、休業によって生じるグランド国映の損害額を計算してこれを補償しょうとしたわけではなく、土地建物の交換契約全体を考慮に入れ、土地建物の交換後も引き続き控訴人所有となる銀行店舗等を賃借した場合に節約できる金額を計算した結果、休業補償の名目で支払う金額を決めたものであるということができる。このことは、その後にグランド国映の休業期間が短縮され、休業補償の金額が少なくなっても、控訴人に支払うべき総額は変更されなかったことや、グランド国映に対する休業補償及び物件補償の金額を調査した南西不動産鑑定所作成の調査報告書がきわめて恣意的で合理性のないことなどからも明らかである。
そして、これからの事情の加え、本件基本契約において、休業補償及び物件補償を受け取る当事者(甲)は、控訴人及びグランド国映とされており、その支払いに関する領収書も、控訴人及びグランド国映が連記していること、本件基本契約の明文とは異なり、右補償金については、支払期日や支払回数が変更となったにもかかわらず、個別の契約書は作成されなかったこと、琉球銀行は、控訴人を宛先として、八六九万九〇〇〇円の支払伝票を切り、また、一八六八万七〇〇〇円についても、控訴人の銀行口座にこれを振り込んでいることなど、前記認定事実をも総合すると、右補償金は、グランド国映が本件譲渡建物から立ち退かなければならないことに伴って発生する損失につき、その補償をグランド国映独自の利益であるとしてその金額を算定し、これを琉球銀行がグランド国映に対して支払ったものではなく、琉球銀行と控訴人との間で、それぞれの所有する土地建物を交換するにあたり、琉球銀行が控訴人に対して交付すべき金員として、全体的かつ包括的に評価し、その金額を決めたものであるということができる。
3 なお、前記認定事実によれば、グランド国映は控訴人から本件譲渡建物を賃料月額一〇万円で賃借していたものであり、グランド国映が本件譲渡建物を明け渡すとすると、相当の損失が生じることが予想されていたということができるものの、他方では、琉球銀行とグランド国映との間で、グランド国映に本件譲渡建物の明渡し義務を負わせるとともに、琉球銀行にグランド国映への補助金の支払義務を負わせるといった個別的双務契約は存在せず、かえって、控訴人は、本件譲渡土地建物につき、所有権の完全な行使を阻害する一切の権利及び負担を除去する義務を負い、したがって、控訴人がグランド国映を本件譲渡建物から退去させなければならないこと、琉球銀行は、右補償金を控訴人を宛先にして同人に直接交付していること、仮に休業補償ないし物件補償が必要であるとしても、実際の負担は、土地建物の交換後、誰がいつ、どこに新たな映画館を建設するか等によって異なるところ、控訴人はグランド国映の有限責任社員であり、その代表者の配偶者であるため、グランド国映との法律関係を比較的自由に決められる立場にあったこと(実際にも、従来は控訴人所有の建物をグランド国営が賃借して映画館を経営していたが、右交換後は、控訴人が土地をグランド国映に賃貸し、同社がその賃借土地上に建設して映画館を経営している)などの事情によれば、琉球銀行としては、控訴人に対して交付した右補償金につき、控訴人とグランド国映との間でこれをどのように分配しても異議を述べる立場にはなく、右補償金の処分をすべて控訴人に委ねたものということができる。
したがって、右補償金は、琉球銀行から控訴人に対して交付された交換差金であることは明らかであり、したがって、その後に控訴人がその金額をそのままグランド国営に支払ったとしても、控訴人に交付された金員が交換差金としての性質を失うものではないというべきである。
4 そして、控訴人と琉球銀行は、それぞれの所有する土地建物を何らの負担のないものとして交換しているところ、負担のない本件各建物の当初の鑑定評価額は、控訴人所有の本件譲渡建物二棟が合計五六八〇万円で、琉球銀行所有の本件取得建物三棟が合計八九三三万円であるから(前認定)、建物の交換に関しては、琉球銀行が控訴人に対して支払うべき交換差金は生じることはありえず、したがって、右土地建物の交換に伴って琉球銀行から控訴人に対して支払われた補償金はすべて土地交換による交換差金であるということができる。
5 以上を前提に、本件土地交換に所得税法五八条の交換の特例の適用があるかどうかを検討する。
右交換の特例が適用されるためには、交換により取得した資産の交換時の価額と交換により譲渡した資産の交換時の価額との差額がこれらの価額のうちのいずれか多い価額の二〇パーセント以内であることが必要である。そして、右価額は、一般的には、通常成立すると認められる正常取引価額をいうが、交換当事者間で合意された価額が交換をするに至った事情等に照らし合理的に算定されていると認められるものであるときは、その合意された価額によることとなる。
これを本件にみるに、まず、本件譲渡土地<1>及び<2>と本件取得土地<1>ないし<3>との差額となる交換差金は、琉球銀行が控訴人に支払った鑑定評価額の差額四八一万四〇〇〇円と補償金一億〇七三八万六〇〇〇円の合計一億一二二〇万円であるということができる。
そして、本件においては、控訴人と琉球銀行は、前途のとおり、琉球銀行所有の本件取得土地<1>ないし<3>の更地価額を三億八〇一六万八〇〇〇円とし、控訴人所有の本件譲渡土地<1>及び<2>の更地価額を三億八四九八万二〇〇〇円とする旨合意しているところ、前者については鑑定評価額に基づいた金額であり、その評価額の算定にあたって調整されたことは認められないから、これをもって合理的な合意価額であり、かつ、正常取引価額であるということができるが、後者については、それに沿う鑑定評価書が作成されているものの、その鑑定評価にあたって評価額を調整していることが認められるうえ、更地価額として評価したとしながら、琉球銀行は控訴人に対し、右評価額の差額のほかに補償金として一億〇七三八万六〇〇〇円を支払っているのであるから、右金額をもって合理的な合意価額であるということはできず、むしろ右当事者間においては、琉球銀行所有の本件取得土地<1>ないし<3>の価額(三億八〇一六万八〇〇〇円)に右補償金の金額(一億〇七三八万六〇〇〇円)を加えた四億八七五五万四〇〇〇円をもって、本件譲渡土地<1>及び<2>の価額であると合意したものと評価することができるというべきである。
なお、右金額(四億八七五五万四〇〇〇円)が客観的な正常取引価額でないとしても、前途のとおりの取引の経緯、特に、本件譲渡土地<1>及び<2>については、当初の鑑定評価額坪単価一四〇万円の合計四億一四五九万六〇〇〇円とされ、また、有利な取引をしようとしていた控訴人の希望価格が坪単価一五〇円(面積合計二九六・一四坪をかけると四億四四二一万円となる)であったこと等の事実によれば、その客観的正常取引価額は右金額(四億八七五五万四〇〇〇円)以下であって、琉球銀行が本件譲渡土地の取得を強く希望していたことから、同銀行に不利な交換がなされた(これも通常の取引において成立する正常な取引価額を判断する一事情)ものということができるから、交換差額割合の判定基礎となる時価は、前途の四億八七五五万四〇〇〇円とするのが合理的であると考えられる。
したがって、前記の交換差金の金額は、控訴人所有の本件譲渡土地<1>及び<2>の価額の二〇パーセントを超過しているから、本件土地交換に所得税法五八条の交換の特例の適用はないことになる。
6 次に、本件建物交換に所得税法五八条の交換の特例の適用があるかを検討するに、右特例の適用のためには、交換により取得した資産を譲渡した資産の譲渡の直前の用途と同一の用途に供したことが必要とされる。
そこで右用途の同一性をみるに、前記1の各認定事実及び乙第二七、二八号証、第三二号証ないし第三四号証によれば、本件譲渡建物<1>は映画館の、同<2>は店舗兼事務所の用途にそれぞれ供されており、他方、本件取得建物<1>は銀行の、同<2>は居宅の、同<3>は共同住宅のようとにそれぞれ供され、交換後も引き続きその用途に供されたことが認められる。
銀行の用途については、店舗の用途と同一であると評価することが可能であるから、本件取得建物<1>は、本件取得建物<2>と同一の用途に供されたということができる。他方、本件譲渡建物<1>は映画館の用途に供されていたところ、租税特別措置法施行規則一四条三項、不動産登記法施行令六条の規定などを参照すると、映画館の用途をもって店舗の用途と同一であるということはできないから、本件取得建物<1>本件譲渡建物<1>とも同一の用途に供されたということはできない。
また、本件取得建物<2>及び<3>の用途は居住用であるから、本件譲渡建物のいずれとも同一の用途に供されていないということができる。
もっとも、控訴人は、本件譲渡建物<2>の二階及び四階は従業員の社宅として使用していたものであるから、本件取得建物<2>及び<3>は本件譲渡建物<2>と同一の用途に供されていたものというべきであると主張する。確かに、甲第四号証によれば、本件譲渡建物<2>の四階部分は以前は社員宿舎として使用されており、台所、和室などが存することが認められるものの、他方、右甲第四号証及び乙第二八号証によれば、本件譲渡建物<2>は店舗兼事務所として登記された店舗と事務所の併存型ビルであり、階段の配置状況等からして、四階を一般的に住宅として使用するには不適切であると考えられ、本件交換時には、現実に住居として使用されていなかったことが認められるから、これらの事情に照らすと、本件譲渡建物<2>が居住の用の供されていたということはできない。
そして、譲渡した複数の建物一部の建物と取得した複数の建物の一部の建物のみが用途を同一にする場合、全体として一つの交換契約がなされている以上、用途の同一性のない他の譲渡建物の価額はこれを譲り受けた当事者の、他の取得建物の価額はこれを取得した当事者の、各交換差額となると解され、それぞれの当事者が取得した交換差額のうちいずれか多額のものが、用途の同一性のある建物のうち価額の多いものの価額の二〇パーセントを超過しているときには、所得税法五八条の交換の特例の適用がないことになるというべきである。
本件において、同一性の認められる本件取得建物<1>と本件譲渡建物<2>とを比較すると、本件取得建物<1>の方が価額が多く、その額は、三二四〇万円(最終的な鑑定評価額、甲第一五号証)ないし六一七三万円(当初の鑑定評価額八九三三万円から本件取得建物<2>及び<3>の最終的鑑定評価額二七六〇万円を控除したもの)であると認められる。他方、本件取得建物<2>及び<3>は、右のとおり用途の同一性が認められないから、甲が取得した交換差額ということになり、前記1の認定事実及び甲第四号証、第一五、一六号証によれば、その額は少なくとも二七六〇万円であると認められる。したがって、交換差額の金額は、用途の同一性のある建物のうち価額の多いものの価額の二〇パーセントを超過していることは明らかであるから、本件建物の交換には交換の特例の適用がないことになる。
なお、控訴人の主張するとおり、本件取得建物<2>及び<3>が本件譲渡建物<2>と同一の用途に供されていたと解する余地があるとしても、前途のとおり、本件譲渡建物<1>(映画館)は用途の同一性がないから、琉球銀行が取得した交換差額ということになり、前記1の各認定事実及び甲第四号証によれば、その価額は三七三〇万円であると認められるから、交換価額の金額は、用途の同一性のある建物のうち価額の二〇パーセントと超過していることは明らかである。
7 以上を前提に、控訴人の譲渡所得の金額を計算すると、まず、その譲渡所得の収入金額は、本件取得土地三筆の価額三億八〇一六万八〇〇〇円、本件取得建物三棟の価額六〇〇〇万円及び交換差金一億〇九〇〇万円(控訴人の受け取った補償金一億〇七三八万六〇〇〇円及び土地の交換差金四八一万四〇〇〇円の合計一億一二二〇万円から控訴人の支払った建物の交換差金三二〇万円を控除しともの)を総合計した五億四九一六万八〇〇〇円である。
そして、譲渡所得の金額は、右収入金額から、取得費二七四五万八四〇〇円(右収入金額に五パーセントを乗じた金額)、譲渡費用一億〇八七二万〇一一〇円(控訴人からグランド国映に支払ったとみとめらられる一億〇七三八万六〇〇〇円にその他の費用一三三万四一一〇円を加えたもの。乙第二〇号証)、及び特別控除額一〇〇万円を控除した四億一一九八万九四九〇円であると認められる。
右金額は、被控訴人が平成元年六月三〇日付で行った控訴人の昭和六一年分の所得税についての更生処分における分離長期譲渡所得の金額と同一であるから、結局右更正処分には違法性は認められない。
また、右事実及び前掲の事実(前記第二のとおり引用した原判決四枚目一〇行目から同五枚目九行目までの「本件課税処分の経緯」記載の事実)によれば、控訴人は、昭和六一年分の所得税の確定申告を過少に行っていたことから、被控訴人は、国税通則法六五条一項及び二項に基づき過少申告加算税(裁決による重加算税の取消後)の賦課処分を行ったものであり、その額は別表のとおりであるから、被控訴人の右処分にも違法性は認められない。
第四当裁判所の結論
以上のとおりであるから、控訴人の本件請求は理由がなく、これを棄却した原判決は相当である。
よって、本件控訴は理由がないから、これを棄却し、控訴費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法七条、民事訴訟法六七条一項、六一条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁裁判官 岩谷憲一 裁判官 角隆博 裁判官 吉村典晃)
(別紙)
<省略>